漆黒 能代 sikkokunosiro’s diary

主に思い出を書いています。いつか現在に追いつきます。

あっつあつやで

今回は作文。

キーワードは「ボーイフレンド」「泥除け」「ホットパンツ」です。ホットパンツってなんだろう?

 

冬の寒さが残りつつも暖かくなってきた三月の頭。私と、私のボーイフレンドは並んで歩いていた。

「ねえ、春休みは映画デートに行こうよ、私ドラえもんがいい」

「おお…付き合い始めて一発目のデートは映画か…ってドラえもんかい。変わらんねえ君も。俺たちもう高校生だぜ?もうちょっと色気があっても…」

「いいじゃん。好きなんだし。私、白のワンピース着てこー。この間買ったやつですごくかわいいんだよ」

「はいはいそーだな…楽しみにしとく」

 

私冬実(ふゆみ)と彼、秋裸(あきら)は小学生からの幼馴染だ。昔から気が合うから一緒にいたら、だんだん好きになってて、でも、好きって言ったらこの関係が壊れるかもしれないと思ったから怖かった。でもやっぱちゃんと気持ちを伝えたほうがいいと思ってバレンタインに思い切ってチョコを渡したら秋裸も好きって言ってくれて付き合うことになった。どうか、この新しい関係がずっと続くと、いいな。

 

でも、そんな私の願い通りには、ならなかった。

約束の日、前日に雨が降ったから水たまりができていた。その水面に映る自分を見て髪の毛を直していた。待ち合わせ場所にしていた公園の犬の像は私に向かって微笑んでるようだった。そこに秋裸が自転車でかっこよく登場、だったんだけど道がぬかるんでて自転車が私の目の前で滑ってしまった。気づくと、私の白いワンピースは泥まみれになっていた。

秋裸が悪いんじゃないってことはわかってた。神様が全部悪い。秋裸が泥を吹くために取り出したハンカチが、私が紹介した漫画のキャラクター入りのものだってのもわかった でも、今日までの期待が全部裏切られた気がして、怒りたい気持ちと泣きたい気持ちと悔しい気持ちが全部ぐちゃぐちゃになって夢中でその場を駆け出した。

 

そのまま、秋裸に会わずに、もう夏になってしまった。以前は頻繁に会っていたのに、一緒に学校に行くこともせず、電話もしなかったら、私たちの距離はこんなに遠かったのかって、また悲しくなった。夏になったら一緒に花火を見れたらいいななんて思ってた自分がバカみたいだ。

 

でも、このまま終わらせない。勇気を出して秋裸にメールをした。今日、またこの公園の犬の像の目に来てほしいと。なによりもあそこから逃げ出して秋裸を傷つけてしまったことを謝りたい。

なんの偶然だろう。また前日は雨で、水たまりができていた。そこに映る私は…

チャリウ 

秋裸がやってきた。自転車に乗って。今度はこけることなく、綺麗に私の前に止まった。

「冬実、この間は本当にごめん。見てくれ、俺、泥除けつけてきたんだ。これで泥は跳ねにくくなる。…もしよかったら、また俺と付き合ってくれないか、…付き合ってくれませんか」

秋裸は頭を下げる。私は泣きそうになりながら微笑む。

「秋裸。見て、私を。ホットパンツはいてきたからどんな泥が跳ねてこようと平気だよ。秋裸、私の方こそ本当にごめん。急に逃げ出したりしちゃって。どうか、こんな私でよかったらまた…」

二人はゆっくり手をつないだ。私たちの夏はここから始まる。

 

ホットパンツは、めっちゃ蚊に刺された。