漆黒 能代 sikkokunosiro’s diary

主に思い出を書いています。いつか現在に追いつきます。

父さん日記

世間一般からはあまりいいイメージをもたれていない、留年。その理由として本人だけではなくそのまわりの人にまで影響を与えてしまうのではないかと考えるからだと思います。しかしそれは本当なのか。もしかしたらにうまくいってるところもあったりしないか。そう思ったので、留年にまつわる話を自分で作って考えてみました。

 

四月七日、木曜日。天気は晴れ。今日は高校の入学式だった。自分の教室に入り、ふと視線を上げたときおもわず「えええええ」という声を出してしまった。なんとそこには、父さんがいた。学生服を着て、席に座っていた。入り口で「えええええ」と言っている僕に父さんが話しかけてきた。「息子よ、なんで父さんがここにいるんだっていう目をしているな。それはなあ、父さんの頭が悪いせいで、三十年間留年し続けているからなんだ。そんなことできるのかっていうかっていう顔もしているな。確かに回数や年齢の制限が決まっている高校は多いが、学校教育法に明確な上限は設けられていない。だから留年し続けることは可能なんだよ。」

なんでそんな専門的なこと知ってるのに留年するんだろう。これから三年間、なにが起こるかわからない高校生活が、今始まった。

 

十月十二日。晴れ。京都に二泊三日で修学旅行に行った。目的地に着いて電車からおりたときに父さんが「京都の地を踏むのもこれで三十回目だ」と言っていた。とても情けなかった。夜ご飯はドリンクバーがついていた。せっかくなのでおなかがたぷんたぷんになるまでジュースを飲んだ。その横で父さんはべろんべろんになるまでビールを飲んでいた。「二次関数わけわからん」「息子勉強教えてくれないかなあ」とか言っていた。いや、僕もよくわかってないんだよなあ…

 

七月十八日。今日は三者面談だった。母さんは忙しいらしいのでなんと父さんが生徒と保護者の一人二役をすることになった。先に返された僕の通知表は2と3ばかりだったので先生にこのままだと少しまずいと言われてしまった。父さんにもしっかりしろと言われた。そして通知表が1ばっかりだった父さんは先生にもう手のつけようがないと言われていた。しっかりしてよ。

 

三月一日。今日は卒業式だ。普通なら。なんと勉強がおろそかになっていた僕は留年をしてしまった。もちろん父さんも一緒に。卒業式が終わったあと、父さんが「俺たちの青春は、終わらない」と言ってきた。延長するだけさせてほしい。来年こそは卒業してやるぞ。がんばれ自分。ごめんね母さん。働け父さん。

 

 

(余談)

これを学校で発表した次の日に衝撃の発見。当時ハンターハンターが三年ぶりに連載再開されるとか言ってジャンプに掲載されている十週ぶんだけ買うことにしたんです。せっかく買ったからには他の漫画も読もう、と思ってページをめくっていると、なんと。出会ってしまった。「高校生家族」という漫画に。この漫画、中卒の両親、飛び級してきた妹、そしてペットまでが主人公とおんなじ高校に入学し、翻弄されながら青春を謳歌していく様を描いたギャグマンガなんですが、初めて読んだとき「設定、『父さん日記』に似てない?」と思ったんです。まあ留年と遅れた入学なので違うと言えばちがうんですが「やられた…!」と思ってちょっと悔しかったです。ちなみに「高校生家族」は単行本購入して読みました。すごく「ふふふ」という笑いが漏れる作品です。