漆黒 能代 sikkokunosiro’s diary

主に思い出を書いています。いつか現在に追いつきます。

羽良 騒亜=パラノイア

朝、新しい自分になったような、いや、また今日もかという気持ちで目が覚める。

俺の名前は羽良 騒亜(ぱら のいあ)。変わった名前の、ごくごく普通の大学生、の体を借りてる宇宙人的存在。いつ頃からこうなったかはもう忘れたし、なぜこいつの体なのかはわからない。体が手に入ったおかげで食事や睡眠という、今まで味わえなかった楽しみを知れたから満足はしてるが。いつこいつの意識が戻ってくるかもわからん。てことでいつ戻ってきてもいいように俺はこいつのふりをしてうまく生活している。

顔を洗ってかかみを見る。相変わらずしけた顔してるな。もっと目をパチッと開けて背筋を伸ばして。髪を整えたら…よし、少しはマシになっただろ首をぐるっと一回転。行くか。

大学に到着。最初はこの体の宿主、羽良クンの友達が話しかけてきたらどうしよう、とか思ってたけどまさかのこの男、友達ゼロ…まったく、華の大学生が何やってんだ。

サークル無所属、バイトなし。家賃は親からの仕送り。電話帳を見たかんじ大学以外に友達がいるってわけでもなさそうだ。羽良クンさては社会性ないんじゃねーの。俺が意識を持った時に流れ込んできたこいつの記憶……。

ー友達欲しさに無理やり話そうとしたものの距離のつめかた間違って逆に嫌われて、孤独に…。バイトも一度申し込んではみたものの面接場所がわからず不安のあまり帰宅ー

まあそりゃ人と関わるのが嫌になるかもしれないな。でもこのままじゃますます閉じこもっちゃうし親御さんにも迷惑かけちゃうしな。よし、体を貸してもらっている礼に、こいつの人生、ちょっと楽にしてやっか。

友達作りは、まあ人に話しかけさえすればなんとかなるだろ。ついでにバイトの件も解決させるか。とりあえず近くにいる人に話しかけた。

「ねえ、ちょっといい?」

あれ、ちょっと緊張してきた。

「な、何?」

「あの、君、バイトとかやってる?ええと、俺と仲良くなって一緒にバイトしない?」

はい、自分でもわかりますね。文法がめちゃくちゃ。

「え、どういうこと、バイトの勧誘?ごめん僕もうバイトやってるから……」

「あ、いやちがうんだ、その」

「あ、もう授業始まるよ」

講義が始まった。ああ、しくじったな~もっと言葉をまとめるべきだった。なによりここからの授業ずっと気まずいしな~。ちょっと俺ももう心閉ざしそう、からにこもりそう、どうしよ~。もう友達作りはいったんあきらめてバイト先探すか?もしこの人がさっきの俺の言葉をうまく汲み取ってくれてたらな~さすがにそんな最高の展開起きないよなあ。ちらちら見てると目が何回かあっちゃった気が…。もうちゃんと授業聞こう。

授業が終わって帰ろうとしたとき、声をかけられた。さっきの人だ…。

「あの、授業前に行ってきたこと、ふりかえってみたんだけどさ『仲良くなって一緒にバイトしようよ』ってことかな」

さ、最高の展開キタアアアアアアアア。

その後、俺たちは連絡先を交換し、いっしょに遊んだり働いたりして友達になった。家賃も仕送りなしで払えるようになった。羽良クン、君が戻ってきたらかなり生きやすいようになってると思うぜ。少しにやけながら家へ帰る。

彼の名前は羽良 騒亜。ごくごく普通の大学生、の体を借りてる宇宙人的存在。

と、思い込んで生活している、本当は、やっぱり、ごくごく普通の大学生である。