漆黒 能代 sikkokunosiro’s diary

主に思い出を書いています。いつか現在に追いつきます。

憎しみの末路

今週も作文です。

使わなきゃいけない単語は「オオカミ少年」「余裕」「手袋」

 

 

 

これは「イソップ物語オオカミ少年」の続きのお話。

 

少年は育てた羊がすべてオオカミに食い尽くされ、悲しさと自分への怒りでいっぱいになり泣いた。村人たちに事の次第を説明しても多少哀れみの視線を向けた後「しかし、まあ、最初にうそをついたお前が悪い」と言って取り合ってくれなかった。

さらには「ざまーみろ」と笑う者たちもいた。」

少年は村人たちを恨んだ。

泣きながら山の上にある自分の家まで戻ってきて、羊の死骸を片づけようと飼育小屋に向かった。すると、小屋に入ろうとしたとき、小屋の中から知らない男がでてきた。

長身で顔は布や長髪に覆われていてよく見えなかった。

「ありゃ、手袋がすっかり血生臭くなっちまった」

「だ、誰だお前!?ここは俺の家だぞ」

「…あ、帰ってきたのか。ちょうどいい、ちょっと聞け」

その場に座るように男は手で合図をしたあと男は横の柵にもたれかかった。

「まず俺が誰かいう質問に答えよ」

 

「俺は、オオカミ使いだ」

「…オオカミ、?」

「ああ、今嫌な予感しただろ、その予感通りだよ。」

一呼吸おいて告げる。

「お前の君の羊を食ったのは、俺の狼たちだ」

「…ふざけるな!」

少年は壁に立てかけてあった木材をとり、男の殴り掛かった。

男はそれを苦も無く避け、余裕の笑みを浮かべる。

何度か避けたあと木材を掴み少年を制止させた。

「話は最後まで聞きなさい」

再び少年を座らせ話始める。

「お前の羊を襲わせたのは、お前に罰が当たったと思わせるためだ。

オオカミが出たなんていうくだらない嘘をついて村人たちを困らせた」

少年は何も言えなかった。

「そしてなんで俺がこうやってお前の前に現れたのかというと、お前にオオカミ使いになってもらうためだ」

「オオカミ使い?」

「どうせこの先どうかするあてなんてないんだろ?だったら俺のとこでオオカミの

使い方学んでみないか?」

「…なんでそんなことを…」

「今羊の養育に頼ってるこの村はオオカミの存在を過剰に恐れてる。

俺のオオカミたちも何匹か殺された。もしお前がオオカミ使いになって

オオカミを用心棒として使えることが証明できれば、オオカミは殺されなくて済む、

お前は村に戻れる。win-winの関係だろ?」

「…僕はあんな村に戻りたくありません」

「おいおい、それは逆恨みってもんだろ。まあ時間たてば戻りたくなるだろ」

男は手を差し出した。

「どうだ?」

「…お願いします」

少年は男の手をとった。

 

 

そこから少年はオオカミと悪戦苦闘して、ときにはケガもしながら着実に扱い方を覚えていった。特に小さかったこどもオオカミのロウとは無二の友達になった。

しかし、村人たちへの憎しみは消えなかった。

 

二年の月日がたち、少年はオオカミの使い方を一通り覚え、男のもとから出ることになった。

「ロウはお前になついてるしな、預けようかな」

「ありがとうございます」

「最後にオオカミで決して村人に危害を加えるようなことはするな。オオカミ好きの俺が許さん」

少年はなにも答えず、軽く会釈した後、ロウとともに出た。

 

昔の自分の家にはすでにちがう人が住んでいた。いまだにこの村は羊に頼っているようだった。

「よし、ロウ、やろうか」少年は合図を出し、その家の羊をすべて噛み殺させた。

 

「オオカミが出たぞ」少年はそう言いながら次々と村の羊たちを殺していった。

どんどんと進んで行くとオオカミ使いの男が前に現れた。

「危害加えんなつったろ」

「村人の皆さんに危害は加えてません。僕は彼らに羊が全員殺されたときの悲しみを味わってほしいだけです」

「なんでそんなふうに成長しちゃったのかなあ」

男は、オオカミを操るための口笛を吹いた。

「無駄です。あなたのオオカミはもう年老いてるはず。若いロウには勝てません」

「…弟子、師匠を超えずか…」

「え?」

ロウが突然体を上下に揺らしたかと思うとこちらに飛び掛かってきた。

「な、ロウ、ぐはっ」

肩を喰われる。

「残念だけど俺の方が上だったらしいな」

「うげっ ごふぇっ」

ロウが少年の肉体をどんどん食いちぎっていく。

少年が息絶えた後、ロウは動きを止めた。

「終わったか」

近くの物陰で怖がりながらその様子を見ていた村人に「大変お騒がせしました」と言って少年の肉片をロープで縛って背負ったあと家に戻っていった。

「よーし、お前ら。ちょっと臭いが、飯だぞ~」

 

 

灰色ストライカー

今回も作文。

使わなきゃいけない単語は「コーナーキック」「復讐」「読み物」です。

 

 

とある学校の校庭。グラウンドでサッカーをする子供たちの愉快な声が響く。その様子を見守るのがこの男、二宮金次。銅像である。「金次郎」ではない「金次」だ。先代の校長がとりあえず建てたこの像にとりあえず命名し、そのまま定着した。

 

サッカーボールが金次の方に転がっていく。取りに来た少年が「絶対邪魔だよなあこの像、なんでこんなゴールの近くにあるんだろう」とぶつくさ言って戻っていく。金次の像はその立像位置のせいか今は「邪魔金次」とも言われている。

金次は思っていた。

(はああああ俺の方が前からここにいたしー!。お前らは知らないだろうけどな、この学校の創立当初はサッカーグラウンドなんてなかったんだぞ。ただっぴろい中庭の俺の特等席よ。お前らがわいわいサッカーやれてるのは俺の厚意、なんだからなー)

 

長い長い年月をかけて性格が完全にねじ曲がっていた金次。今ではこころのなかで浅く貶すことが日課である。

(だいたいさあ、普通銅像とか近くにあったら壊さないように球技とかもうちょっと慎重にやるものじゃないの、なんで全力で少年してんの、抑えてくれよ!)

ボコッ  そんなこと言っている間に今度はボールが金次に直撃。

「あ、またやっちゃった…」

(…またこいつか。もうぶつけられすぎて名前覚えてしまった。佐藤 徳貞。人数合わせでいっつも参加しているが、おそろしく、下手だ。)

「なにやってんだよ徳貞ー」またボールを取りに来る。拾い上げたとき目が合う。

「本当この邪魔金次、丈夫だよなー。何回も当てたのに傷一つ入ってねえもん」

(鍛えかたが違うんだよ)

「…」

(うん?ボール持って後ろ下がって何するつもりなんだ…おいちょっとまさか、やめ)

ボウンッ バーン

「うおーすげー頭跳ねる」

(痛ー!立ってる銅像にボールぶつけるなんて正気か?ばち当たれー!)

「わーそれ面白そうだなー」「俺にもやらせてくれよ!」

(は?は????嘘だろーーーー!)

ボーン(ウグッ)

ボスン(ちょっ)

ドシュシュシューン (ぬあああああああ)

「いいかげんにしろー!!!」

子供たちは全員「え?」という表情を浮かべる。

「お前らなあー!いっつもゴール外しまくるくせになんでこういうときだけコントロールいいんだよ!」

「ど、銅像がしゃべったーー!!?」

「ん?あれ、ほんとだ、すごい、怒りのパワーでしゃべれるようになった!」

体もにょきにょき動く。「おおー感激!」

この興奮を伝えようと子供たちを見たが、さすが子供たち、心の切り替えが早い。もうサッカーを再開している。 

「ちょっと待てーー!なんか言うことあるだろう」

子供たちは本気できょとん顔を浮かべている。

「だいたいなあ、サッカーなんてくだらないもん、やめちまえー!学生は勉強だー!俺を見習えー!読み物を持て―!」

カチッ

癇に障ったのか子供たちの表情が変わる。「くだらない…だと?」「このレベルのプレイがいったいどれだけすごいことなのかわかっているのかな?」

急に雰囲気が変わり、金次はすこし戸惑う。

「そ、そんなん簡単だろ、俺でもできるわー!」

「ほう。じゃあフリーキックの権利を上げよう、決めてみろ」

「上等だよ」

台から降り、グラウンドに駆け出す金次。ボールの前に立つと、突然緊張感が襲ってくる。

「こ、こんなの簡単だ、簡単」

勢いをつけ、思いっきりキックー

 をしたがボールの横にかすっただけで終わり足はほとんど空回り。バランスを失って転んでしまう。

「な、わかったろ、この難しさが」

金次は立ち上がることも、子供たちの顔を見ることもできない。内心みんな自分のことを笑っているんだろうなと思うと恥ずかしく、顔が赤くなる。いや、銅像だから、灰色だったところがもっと灰色になる。

「くそ、覚えてろよ」金次は走り出し、学校から逃亡する。

 

夜、学校に戻ってきた金次は昼間の悔しさを子供たちへの憎しみ、敵意へと増幅させ、復讐に燃えていた。普段なら寝ている時間だがボールをゴールに蹴りこむ練習で汗を流す。いや銅像だから実際は汗が出たりしないのだけども。

「金次さん、頑張ってますね」

声がした方へ振り向くとそこには佐藤 徳貞がいた。

「な、こんな時間になにしてるんだ」

「あれ、知らなかったんですか?僕いつも夜こっそりここで練習してるんですよ」

「全く知らなかった、寝てた」

佐藤君がボール自分の前におき、蹴る。おしい、ゴールの枠に当たった。

「…みんなは僕がミスしてもドンマイって言ってくれるけど、やっぱり悔しい。僕、サッカー大好きだから。ゴールも決めたいし」

「…サッカー、好きか?」

「いやだから今好きと言いましたよ」

 

 

それから金次は子供たちとサッカーをするようになった。本格的にサッカーをやりたいと思いだした金次は子供たちが無事卒業したのを見届けたあと、サッカー強豪校にFA宣言をして入り、銅像として日々サッカー少年たちの体づくりを観察した。

 

さらに数年後、金次はワールドカップ日本代表としてグラウンドにいた。

「金次さん、いよいよ始まりますね」

隣には同じく日本代表のユニフォームを着た佐藤君がいた

「ああ、努力はかならず報われる、やるぞ」

背番号10は歩き出した。

乾死人温屏風

えー今まで思い出を書いて投稿してきましたがもう現在の時間軸に追いついてしまったのでね、ネタ切れです。でも週一ペースで書くという習慣はくずしたくない。

ということで今回はだいぶ前にやった作文です。ランダムで単語が出てくるアプリで出したものを全部使って話作るというやつです。

出たのは「亡骸」「転がす」「創作意欲」でした。

 

 

「お前、なにやってる」

こちらに気付いた男が振り向いた。見たことのない男だ。生気があるのかないのかわからないひん剥かれた目玉と濃いくまが印象に残る。普段ならこの村の陰気さにまじって目にも留めないだろうが、問題はこの男の所業。

太ももがちぎられた男の亡骸を、刃物で刺し、滴る血を無理に絞り出していた。壺にいれていた。

「知り合いだったか?」男が何でもなさそうにいう。

「いや…初めて見た者だ。だが、そんなことはどうでもいい。お前がなにをやっているか聞いている」

「俺は…芸術家…だ。作品を作って日銭を稼いでいる。とは言っても、まともに食ってはいけていないがな。」

「まさか…その血を使うつもりなのか?」

男はそうともちがうとも言わずに死体を壁に座らせ、固まった腕を無理やり半ば切り落としながら壁に打ち付け、固定した。死体は今にも動き出しそうな不気味さを纏っていた。最後に死体の前に座って、神と筆を取り出し、血を墨汁代わりに絵を描き始めた。

さらさらと描きあがったそれは、死体をの内面までもをさらけ出したかのように、真っ赤であった。男は立ち上がり、茫然としていたこちらを見て

「まだいたのか。意外と物好きなんだな」と言った。

「…別に責めはしないが、死者への冒涜だと感じたりはしないのか」

男は口元だけ笑いながら言った。

「いまさらだ。人を食ってるやつらが言えることか?。この村だけを見ても餓死だの口減らしだので死体がゴロゴロ転がってる。生きるためならなんだってやる」

「生きるためなら他にいくらでもやりかたはあるだろう」

男は道具を片づけるとなにも言わずにその場を離れようとした。

「どこへ行く。」

「まだ描くものがある」

ついていくと男は少し驚いた様子だった。

「…本当に物好きだな」

 

しばらく男はいたるところに転がってる死体の顔をちらちらと見て回り「違うな…」などといいながらうろついていた。そしてある亡骸を見たときとても悲しそうな顔をした。小さな女の子だった。

「まさか…知っている者か」

「…いや、単に幼い子が死んでるのを見て残念に思っただけだ」

その子を抱きかかえ再び壁に座らせた。男はしばらく目を何も言わずにその子を見つめていた。創作意欲の行く末を決めているのだろうか。「よし」と言って自分を叩き、その子に触れた。

顔についた泥を丁寧に払い、髪の毛を整えていく。まだ死んで間もないのだろう。他の死体の比べると幾分綺麗な顔をしていた。新しい柔らかい筆での先に赤い粉をつけ、その子の頬に温かみを与えた。現代でいうところのファンデーションである。そして持っていた布をやると体にかぶせてやると明るい顔だけが見え、まるでただ安らかに眠っているようだった。

男は今度は絵を描かずに立ち上がった。懐から乾物を取り出し、その子の前に一つおき、自分でも食べ始め、お前にもやる、ということなのだろうか手を突き出してきた。

「大勢で食べたほうが楽しいだろ」

久しぶりの食物は活力を与えてくれた。

男は荷物をまとめるとつぶやいた。

「…人は無残にのたれ死ぬ。俺は彼らの情動を描き残したいのさ」

夕日を背景にその男は去っていった。

作文かい?

冬休み。暖冬と思ったら急に寒さがやってきて手がかじかんでます。

今日は小学校の同級生の武志君と遊びます。彼とは長期休みに入るたびに会ってます。日常的にかかわるわけはないけどこうやってしっかりつながりを感じるのってすごく…いいですよね…自分で言うのもなんですけど。

同じマンションに住んでるので待ち合わせ場所はいつもロビー。椅子に座ってぼーっと

床を見ていると後ろから元気に声をかけられました。

そして「さっ、なんも予定決めてないけどどうする?」いつもの武志君のノリです。

「う~ん、家で遊べる許可取ってあるけど、せっかくだしどこかに出かけるのもありかもしれん」

「じゃ、ポケモンセンター行こうぜ!」

「え、ポケモンセンター博多だけど…」

「いいやん博多!」

そんな感じで博多に行くことが決定。博多はそんな思い付きで行くところちゃうで…

そして駅まで行き博多方向の電車に乗りました。博多は遠いし、お金もないので新幹線に乗るわけにもいかず、一時間半ほど揺られて、ゆったり行きます。電車に乗っている間、周りが静かで話せそうな雰囲気じゃなかったので、持ってきていた自作漫画を読んでもらって感想をもらいました。「主人公が空気」だそうです。改善せねば。

博多には十一時ごろ到着。偶然にも一か月くらい前に一人で博多に来ていたので、広大な駅でも迷うことはな…いことはなかったです。「ここ横に渡れば…えそこつながってないの!?」が何回もありグーグルマップを使いながら十五分くらいかかってポケモンセンターに到着。ポケモンのぬいぐるみを見ながらこのポケモンのどこに美しさを感じるかについて語り合いました。出口付近にガチャガチャがあり、なにがめぼしいいのあったらやろうかなと近づくと、「一回四百円」たっか! 驚いていると「今ガチャ全部こんな値段だぞ」と笑いながらコインのガチャを回していました。

お腹がすいてきたので昼食タイム。店が多すぎてなかなか決められなかったので後五個分いってあった店にしよう、といい結果焼肉屋さんになりました。焼肉って高いんじゃないかと思ってメニューを見ると定食はそこそこ良心的な値段。安心して入りました。上着を運んでくれたりなにも言ってないのにいいタイミングで注文聞きにきたり、気のせいか普通の店よりサービスが手厚い気がしました。お肉を焼きながら、トーク。なんだかこの状態が映画のシーンみたいで心地いいです。

お腹を満たしたらちょっと歩いてキャナルシティへ。ジャンプショップというところに行きました。僕のヒーローアカデミアのキャラの身長の低さ、ONE PIECEのキャラの身長の高さにぶったまげた。(ロビンまさかの188㎝)打ち切り疑惑のある作品のグッズももわりとあってうれしかったです。PPPPPPはなかったけど…高校生家族も…マグちゃんはあったよかった。

暗くなる前にかえります。再び一時間半ほど揺られて故郷へ。今回は座れなかったので大変だった。

時間が合ったらポケモンをやろうという話をしてたんですが戻ってきたときはもう外が暗くなっていました。しかし、せっかく育ててきたんだしと結局やることになりました。小学生の頃以来来ていなかった公園に久しぶりに帰ってきました。もう暗いのにわいわい元気に遊んでいる子供たちがいました。我々まだそんなに歳じゃないけどほほえましい。木の下にある懐かしのベンチ。休日はみんなで集まってポケモン大会をやっていたことを覚えています。多分製作者が一番喜ぶ楽しみをしていたんじゃないだろうか。

今はソードシールドをやっているのですが次からはそろそろ次世代に移行しようぜという話になりました。つまり今回でソードシールドも最後です。お別れマッチ、今まで育てた最高のメンバーで臨みました(お気に入りのコイキングのせいで負けましたが)

帰り際また春休みに遊ぼうと約束しました。この関係がどのくらい続くかわかりません(大学で離ればなれ、いや受験期に入ったらもう遊べないかもしれない)。でも、とりあえずこの、友達と遊んで楽しかったという思い出は大事にしようと思いました。

プリティ会議

※初めに この話はフィクションです。実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。

 

ここはとある制作会社の企画部。机の上に大量の紙くずをほうりだし頭を抱えている男が一人。おや、誰か入ってきたぞ。

「あれ、日朝(ひあさ)、お前まだ残ってらのか。うわ、机散らかってるなあ」

「あ、深夜(ふかや)さんお疲れ様です。新作プルキュアの名前考えてるんですけど、いまいちしっくりこなくて。そうだ、ちょっと見てもらえますか」

「おん、全然いいけど。見るって何を」

「プルキュアって『HUGっと!プルキュア』とか『ヒーリングっどプルキュア』とか○○とプルキュアっていう名前がしっくりくるイメージがあったんです。だからその、○○とプルキュア、ていうのにあてはめていろいろ考えてみたんですが…例えばこんなのです」

まるで大喜利の回答かのごとくタイトルの書いた紙をばんっと見せる。

「『ずっとプルキュア』…とかどうですか」

「う~ん、悪くはないけどなあ。たしかにどこかしっくりこないかなあ。なんか他にないか」

「もちろんありますよ。『しれっとプルキュア』秘密の魔法少女感あっていいと思うんですけど…」

「いや、まあ、言いたいことはわかるんだけど…。『しれっと』っていう単語がプルキュアのかわいさと結びつかないんだよな。他はないか」

「『ぼさっとプルキュア』」

「なんか片手間にやりそうな気すんなこいつ。なんでぼさっとしてんだ。もっとやる気に満ちててくれよ」

「やっぱりだめですかね」

「というか平仮名でまとめることに拘る必要なくね。今までも『ハートキャッチプルキュア』とか『ハピネスチャージプルキュア』とかけっこう長い名前のが何個かあっただろ。もっと自由に発想しようぜ」

「ああ、そういえばそうですね。長くていいならけっこうありますよ。これどうですか。『テクノカットプルキュア』」

「怖ーよ。あの髪色で横刈り上げてたらめちゃめちゃ怖ーよ。日曜日朝に放送できるか。他にないか」

「『キットカットプルキュア』」

「他社の商品名入っちゃってるじゃねえか。そもそもどういうプルキュアなんだよ」

「いやその…プルキュアですし、街の平和より赤点回避が大事なときもあるかなと…」

「そんなリアルなの見たくないよ。・ほかほか」

「『マリーアントワネットプルキュア』」

「もう悪ふざけに行ってないか」

「決め台詞考えたんです。『悪者に襲われるのが嫌なら変身すればいいのに』」

「それができないから困ってんだろうがー!つぎだ」

「『タンクトッププルキュア』」

「おお、タンクトップとプルキュアがプの文字で融合しちゃったぞ。絶対音で聞いたらわからないやつじゃねえか、つぎつぎ」

「『コブラツイストプルキュア』」

「お前プロレス好きなのか。コブラツイストってあれだろ、相手しめあげるやつ。子供たちプルキュアが敵にプロレス技しかけてるのをどんな気持ちで見てりゃいいんだよ。だめ、次」

「『フライングチョッププルキュア』

「もうなんでもありじゃねえか。お前がやりたい放題やってるだけじゃねえか」

「次回予告でこれ流れたらそうとう面白いと思うんですけどね。『平和を乱す悪者には、私たちが飛んでいってチョップをかましてやるわ。次回、新シリーズ、フライングチョッププルキュア、乞うご期待』とか」

「いや、そりゃ面白いとは思うよ。実際テレビでそれ流れてきたら二度見のちガン見すると思うよ。でも、やっぱ一年続けること考えるとそれじゃあもたないと思うけどなあ」

「そうですか。ありがとうございました、もう一回練り直しますね。あ、そういえば深夜さんはたしか新作スーパー戦隊のタイトル考えてましたよね。あれはどうなったんですか」

「ああ、それがどうもしっくりこないんだよな。いちおう○○戦隊、○○ジャーの形にはしたんですけど」

「へえ、どんなのですか」

「『ふっくら戦隊、炊飯ジャー』」

「…練り直しましょう」

キミに乾杯

「ただいま~」

「おかえり~。仕事お疲れ様」

「いやいや君だって。あれ、今日仕事早く終わったの?」

「まあそんなところ」

今僕の前にいるのは僕の妻の亜美(あみ)。仕事しているのに気づいたら終わってるくらいに家事もできるすっごくたのもしい人。うん?今ちらっと僕の手もとを見た…あ、からの弁当箱早く出せって催促してるのかな。

「ごめんごめんこれ僕が洗うからさ。君はゆっくりしてて」

「あ…うん。じゃあ夜ご飯作ろうとしてるところだったからもどろうかな。今日のごはん期待しててね」

控えめに握りこぶしを胸の前につくってもどっていく。しっかり者で助かるんだけどいつも足引っ張ってばかりで申し訳ないなあ。

かばんから包みをだしていると亜美の声が響いた。怒鳴られたのかと思ってびっくりしたけど、どうやら電話しているみたい。会社の人からだろうな、なぜか僕以外に対しては語調強いんだよなこの人。

「なにあったの」

電話を終えて納得いかなそうな顔をしている亜美に話しかける。

「『書類に不明瞭なところがあるから今から会社にもどってきて教えて』だって。ばかにしてる」

「…まあ、会社すっごい近いからね。そういう使い方されてもしかたないよね」

「近いって言っても行くの十分以上かかるのに」

「うん。…とりあえず、会社…行って来たら?」

「え、でもそしたらごはんが…」

「いいっていいってそのくらいでおなかと背中がくっつく貧弱な胃袋ではございません。それにスッキリしたあとでごはん食べたほうがきっとおいしいよ」

あきらかに不服そうな亜美をなんとか会社に向かわせ、台所の前に立つ。ふっふっふ。予期せぬいいところ見せるチャンス到来。もしこれで会社からもどってきたとき、僕がすでにご飯作り終えてたら絶対びっくりするぞー。…さあ、だが困った。何を作るのか聞いてなかった。勝手に違うもの作ってたらがっかりされちゃうな。はっ。台所には亜美が調理途中の食材や使う予定のもの、器具もある。ここから予想できるかも。これは、ダイイングメッセージならぬ、ダイニングメッセージやー。…はいバカなこと言ってないでさっさと考えましょう。えっと、ここにあるのはじゃがいも、ひき肉、たまねぎ、卵、パン粉、しょうゆか…。う~ん僕が好きに作れって言われたらコロッケだけど…亜美が好きなグラタンもあり得る。はたまた別の…。よしっ、悩んでもしかたないし、早く決めてつくっちゃうか。間違ってたらごめ~ん。

はあっはあっ。会社からの帰り道を走って帰る。空気が冷たい。雪もちょっと降り出したみたいだ。…「不明瞭なところ」って単なる誤植かよ。そのくらい自分たちでなんとかしてよ。しかもそのあとつまらない世間話のせいで長引いたし、本当にもう…

痛っ

走りながら時計なんか見たからこけてしまった。けがはない。でも、もう走る気力もない。…ごはんだいぶ待たせちゃってるな。コロッケ…作ったら喜んでくれると思ったんだけどな…。はあ…今日…結婚記念日なの、覚えてくれてるのかな…。うつむきながら歩く。なんだかひどく悲しくて寂しい。

暗い気持ちは寒さのせいだったということにしよう。家に入ると暖かい空気と、…おいしそうなにおいがしてきた。そして元気な顔がでてくる。

「おかえり、ちょうどできあがったところだよ、きてきて」

リビングに入ると、机の上に湯気の立ったグラタンが置かれていた。

「ごめんパン粉の使い方わかんなかったからいれなかったよ。しょうゆは隠し味に。どうぞ、召し上がれ」

ぱくっ あついあつい

「…おいしい」

「よかった。そうだ、これプレゼント。覚えてるかわかんないけど、今日って結婚記念日なんだよ」

包みから出てきたのは、ワイン。

「ジャジャーン。いいお酒だぞ~。おこづかい節約して買ったんだ~。…あれ、なんでそんなに笑ってるの」

「え?あ、自然となってた」

「そっか…まあいいや」

グラスにお酒を注ぐ。

「じゃ、二人の記念日に、乾杯!」

「うん!」

カチーン

まくら論争

このあいだ、枕の理想の高さについて知りました。床と首の傾きとの間に生まれるすき間にさしこめるくらいがちょうどいいということでした。まあ枕は沈むので実際もうちょっと厚みがほしいですが。この理想の高さを知ったときにちょっと思った、

「膝枕ってけっこう高くないか」と。太ももの厚みだけでただでさえ普通の枕以上あるのに、正座のイメージあるからすねの厚みも加わってとんでもない首の角度になるような気がします。太ももつるつるの人だったらすべって首直角になる可能性もありますね。とにかく、膝枕ではほぼ確実に首を痛めてしまう。そこで、今回は人間の体の部位で一番枕に適しているのはどこなのかを考えていきます。

エントリーナンバー1、うでまくら。これは優勝候補でしょう。一人でも横になって寝るときは腕使いますから。ちょっとごつごつしているところが難点ですが、ムキムキになればいい話ですし、合格でしょう。

エントリーナンバー2、よこばらまくら。あ、これも意外と使えるかも。高さはちょっとありますが、ふっくらしてるので寝やすい。腹筋に力をいれることにより固さの調節もできますね。お腹すいてるとゴロゴロいうのがマイナスですが…。

エントリーナンバー3、土ふまずまくら。これは…高さはちょうどよさそうですね、向きによっては角度も変えられそうですし。ただ、かかとが固くて痛いし、なにより臭そう。悪い夢を見そうな気がするので、これはなし。

エントリーナンバー4。リアルひざまくら。今更ですけど膝枕って正確には太ももまくらなんですよね。なので今回エントリーさせたのは本当の「ひざまくら」です。ひざこぞうにのっていただきます。…キックされているように見えますね。ひざこぞうもまた頑丈で痛そうですし、全然くつろげているような感じがしません。こちらも残念ながら不合格です。

エントリーナンバー5、あたままくら。ええ、これは想像しづらいと思うので丁寧に説明しますね。うつ伏せになって寝ている人の頭蓋骨にのっかって寝るタイプのまくらになります。首の角度がきついし、下の人が息できなくてくたばりそうですね。ちょっとこれは命に別状が生まれちゃうのでなしです。でも、髪の毛の部分なら使えるかもしれない。アフロの人とか、上の部分貸してくれないかなあ、やっぱり撤回、「髪の毛部分のみあり」とします。

ところで、膝枕の寝ている側のきつさがわかりましたが、それよりもきついのが、膝枕の寝ている側のきつさがわかりましたが、それよりきついのが、膝枕やってあげている側。重い、動けない、しゃべれない、の三重苦です。そこで、その場にいる全員が枕を得られるよう考え出されたのが「膝枕カルテット」です。これで四人が同時に膝枕できます。まず二人が普通に膝枕します。そして膝を提供している側の人は、膝を枕にしたまま寝転がり三人目の人に膝枕してもらいましょう。その要領で三人目の人も二人目の人に膝を提供しつつ、一人目の人に膝枕してもらいましょう。こうしてできた四角形、全員が膝枕しながら、膝枕してもらう、「膝枕カルテット」の完成です。これで真ん中でたき火とかしたらみんな暖かいね。

さあ、話がだいぶ横道にそれてしまいました。以上エントリーしてくれた五つのまくらで一番使いやすそうなのは…「うでまくら」ですかね。やっぱり一人でもできるのがいいです。まあしかし、この話を書いて導き出された結論は、人を枕にするなということ。